12月9日(土)

クリスマス・ベイビーズ


折しも急かされるように夕日が沈んでいった後の、宵闇の中でイルミネーションがキラキラと美しく瞬く時間帯。
いつの間にかクリスマスの話題が盛り上がる中に、ひと仕事終えたNさんが加わって、数年前のクリスマスの出来事を話しはじめた。

Nさんには長い付き合いになる体の弱い友人がいた。自分の身に危険が及ぶことになっても、どうしても子供を産みたいという強い思いを持っていたその友人は、ようやく念願叶って懐妊し、クリスマスに出産を控えて、その体ゆえの過酷な試練と戦っていたという。

「それでね、私、考えたんです。彼女のために何かしてあげたい!だけど私には何もしてあげることはできないから、その代わりに一生懸命サンタさんにお祈りしようって。」
彼女は両手を組む仕種をした。

「ちょっと待ってよ、、祈る気持ちはわかるけれど、どうしてサンタさんに祈ったわけ?」
私は軽く苦笑した。宗教の有る無しに関わらず、とりあえず私たちがそんな時に祈る相手というのは「神様」とだいたい相場は決まっているのに。

「だって、サンタさんって、クリスマスにお願いするとプレゼントをくれるでしょ?」

「ええ、そうね。」

「私は何もいらないから、彼女に無事に赤ちゃんをプレゼントしてあげてくださいって、一生懸命祈ったの。」

そう答える彼女の声が、私にはどこか遠くから聞こえてくる心地よい祈りの歌のように聞こえた。

当時すでに20代の後半に差しかかっていたはずのNさんが、まるでサンタさんの存在を信じて疑わない少女のように、澄んだ心で祈り続けた願いは聞き届けられて、無事彼女の友人はクリスマスに可愛いわが子をその腕に抱いたのだった。

ではその年、Nさん自身はサンタさんのプレゼントはもらえなかったのだろうか…

友人から少し遅れた昨年のクリスマスに、Nさんもまた愛らしい女の子を授かった。
多分それはサンタさんの贈り物ではなくて、優しいご主人や理解のあるご家族やNさん自身の幸福の結晶なのだろう。
けれど、あの年にNさんが自分を差し置いてまで友人のために祈った分、ちょっと目をパッチリさせてあげようとか、健康で気立ての良い子にしてあげようとか、きっとサンタさんの贈り物がプラスされてこの世に誕生したのではないかと私は思っている。


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