その方に出会ったのはもう五年ほど前のことになる。 冷たい風が街路樹の根元に残る落ち葉を踊らせている通りを眺めながら、昼下がりの喫茶店で私たちは仕事の打ち合わせをしていた。
「今日は娘の誕生日なんです。」
「そうなの?! じゃ、お祝いしなくちゃ!」
堅苦しい話が一段落して、女性同士のちょっとした世間話の中で私がそんな話をすると、その方はすかさずウエイターを呼び止めて2人分のケーキを注文した。
「あの、私じゃなくて、娘の誕生日なんですよ。」
勘違いをなさってのことかと思い、私が言い直すとその方はにっこり微笑んで軽く首を振った。 私より少し歳上の、笑った時にできる目尻の柔らかな皺が実に魅力的な方だった。
「あのね、お誕生日は生まれてきたお嬢ちゃんと、お嬢ちゃんを産んでママになったあなたの両方の記念日なのよ。だからあなたにもね、おめでとう!」
手にしていたコーヒーカップを少し挙げるようにして乾杯の仕種を真似るその方につられて、私も慌ててカップを手にとった。とても新鮮な驚きと、あたたかな喜びに心満たされながら。
以来、我が家の12月6日は二つのお祝いをする日。
なーちゃん、17歳のお誕生日おめでとう! そして私にも、、おめでとう!
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