今年もいつの間にかクリスマスシーズン。
六本木のけや木坂のイルミネーションは美しく輝き
多くのカップルが嬉しそうな笑顔を浮かべていた。
青と白の灯火は、間違いなく見る者の心まで
明るく照らしているようだ。
皆さんは「オペラ座の怪人」をご存知だろうか。
オペラ座に住み着く怪人が、美しい歌姫に恋をするが、
最後には彼女の幸福を思って自らを消し去る 悲恋物語。
この物語の根底にあるのは「人間の業の深さ」と言う事だろうか。
実はこの物語に真の悪役はいない。
醜さ故に差別と迫害を受け、地下室に身を潜めた怪人。
自分の愛する女性を只管守ろうとする子爵。
二人の男性からの愛に思い悩む歌姫。
誰もが自分の愛を貫こうとすれば、
互いに傷つけ合ってしまう。
恋愛だけの問題に限らず、
人間は他人を傷つけずには生きていけない。
だからと言って、傷つけ合うことを恐れて、戦うことをしなければ、
自分の大切な物を何一つとして守れないことも事実だ。
多くの場合、人生とは不条理なものだから。。。
ただ、この物語にはもう一つの側面がある。
最後には歌姫の幸福を願い、自らを永遠に消し去ってしまう怪人。
彼の姿から見えてくるのは「無償の愛」。
ある有名作家二人が対談した時、「男性にとって最高の美徳とは?」の問いに、
二人は異口同音に「自己犠牲」と答えたと 言う。
自分の愛する人のために、自らを犠牲にする。
時には生命さえも。
私達がそれを尊く美しいものと思うのは、
世界がとても利己主義になっている裏返しなのかもしれない。
ある哲学者は著書の中で、「20世紀には、もはや犠牲に値する人間は存在しない。」と言っている。
二度の世界大戦を経験した世紀に、、
哲学者は何を見、何を感じたのだろう。
21世紀を生きる私達には、この世紀を「不幸な時代」 にしてはいけない責任がある。
私達自身のためにも、そしてこれからバトンを受け継いでいく 小さな生命のためにも。。。
私を含めた一人一人が小さな勇気を振り絞ることで
世界を変えることができるかもしれない。
私達がこれまでの尊い犠牲の上に生活をしている様に、
これから生まれる生命のために私達の無償の愛が必要とされる時が来るのかもしれない。
キリスト教の最も重要な教義は「愛」であろう。
「汝、隣人を愛せよ。」と言う聖書の一節は
クリスマスに考えるのには相応しい言葉と思う。
最後に、小説「最後の一葉」では、嵐の晩に
壁に一枚の葉を描く男が登場する。
自分自身の戒めのためにも、私達の誰もが「最後の一葉」の
描き手になれることを忘れないでいたい。
そして世界中では今でも争いが絶えないが、
皆さんが暖かい気持ちでクリスマスを過ごされることを祈りたい。
世界に愛が溢れる日が来ることを信じ、
そんな奇跡を祈って。
2006年12月 晴れた日の午後に
(ゲスト寄稿:ミズシーさま)
昨年に引き続き、ご執筆の依頼を快く引き受けてくださったミズシーさまは、mixiを舞台に、洗練された深い味わいと鋭さを併わせ持った魅力ある文章で、さまざまなお話を書き綴っていらっしゃいます。 クリスマスを間近に控え、ただ華やかな賑わいに浮かれるだけではなく、どこか荘厳な雰囲気をふと感じるこの時期にふさわしい、胸にしみ込むようなお話。まさにこのアドヴェントダイアリーも、ささやかな力ながら同じ祈りを発信し続けている場です。素敵なご寄稿を、どうもありがとうございました。
Fumiko
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