12月23日(土)

命の灯

~ ゲスト寄稿:アイーマさま ~


彼女が逝って3回目の冬が来る。

クリスマスの余韻が覚めやらぬ時季に、静かに消えた命の灯。
横たわった彼女の顔を、私は一生忘れないだろう。

青春時代の一時期をオーケストラ部で共に過ごした彼女はその時27だった。
人が好きで、音楽が好きで、がんばりやな彼女。細く、華奢な、ガラスでできたような命の灯の持ち主だと知ったのは、出会ってしばらく経ってからのこと。しかしそれを知ってもなお、いつか全快するだろう、大人になったら健康になるだろう、と私は意味もなく楽観的に捉らえていた。

ああ、なぜ、未来は明るいものと無条件に決め付けていたのだろう?
生は死と常に隣り合わせだというのに。それは確率統計的には低くとも、若いからといって逃れられない運命なのに。

彼女が逝く年の夏、私は同窓会に誘われたが多忙を理由に断っていた。
企画したのは彼女だったということを、私は彼女のお別れ会で知った。

「あの頃、実は入退院を繰り返していた中だったんだよ」
こうなることを予感してみんなにお別れしたかったんだろうね、と友達がポツリと言った。

取り返しのつかない後悔があるということを・・・私はようやく悟った。

***

今年の漢字は「命」だという。

自ら命を絶つ若者がニュースに取り上げられるたび、私は彼女の死を思い起こさずにはいられない。

『あなたがいらないと思った一日は、別の人にとって必死に生きたいと望んだ一日なのです』

どこかで聞いたこの言葉を胸に、クリスマス、私は彼女を思って灯火を点す。

(ゲスト寄稿:アイーマさま)


今を花の盛りと生きる歳若いアイーマさんの胸の底に、こうした忘れ難い出来事が潜んでいたことを私は今回初めて知りました。この場で彼女の追悼をしたいというお申し入れは、この年のアドヴェントだからこそ並ぶカレンダーの日付けの中に違和感なく治まりました。まさに「命」の年2006年。
ひとつだけ私が申し上げたいのは、あなた方は「未来を明るいものと無条件に決めつけて」いてもいいのです。ぜひ、そんなふうに信じて生きてほしいと思います。

当サイトの文藝館に唯一の部屋を持つアイーマさん。その豊かな才能と感性をChristmas Museumは応援しています。今年もご寄稿ありがとうございました。慎んでお友だちのご冥福をお祈り申しあげます。

Fumiko 


本日のご提供画像

「利用規約」をよくお読みの上、お約束を守ってご利用ください。
下の提供画像以外の画像のお持ち帰りは固くお断りいたします。








<<< 前の日 次の日 >>>

▲Advent Diary カレンダーに戻る


Christmas Museum © Christmas Museum / Tokuyasu Intelligence Agency All rights reserved.